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ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書)ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書)
門倉 貴史
宝島社 刊
発売日 2006-11-09



今こそ、セーフティーネットの張り替えを… 2007-09-20


 著者が「あとがき」で語っているように、本書は「日本で年々深刻化する『ワーキングプア』の問題にスポットライトをあて、たくさんの統計データや、実際に『ワーキングプア』に陥った人たちへのインタビューを紹介しながら、多面的に考察してきた」ものである。そういう意味で当書は、現代日本における雇用状況の断面を鋭く活写しており、非正規雇用や低賃金という劣悪な環境の下でも働かざるを得ない若者や中高年者、シングルマザー等の呻吟や苦悩の声を決して等閑視することはできない。



 こうした状況を踏まえ、著者の門倉貴史氏は同書第5章において、非正社員から正社員への門戸を広く開放することや消費税に代わる「支出税」の導入、最低賃金(最賃)の大幅引き上げなど、ワーキングプア問題の解決に関して傾聴に値する処方箋も提示している。ここで是非とも確認すべきは、「資本主義市場経済というのは、その成立と同時に市場化の限界を抱えている」のであり、「人間の労働力は、通常の商品や資本とは大きく異なり、市場化になじまない性格を有している」(1)ということであろう。



 この国は、2001年5月に誕生した小泉政権の「聖域なき構造改悪」によって、本書のごとく雇用状況を悪化させ、日本独特の「公共事業型社会保障」(2)を葬り、市場経済化に伴う「リスクを社会全体でシェアする(分かち合う)」(1)セーフティーネットもズタズタに切り裂かれてしまった。まさに「政治の失敗」(1)なのだ。そして今、何より必要なことは、竹中某の嘯く「(小泉)改革の続行と強化」(9月18日付『日本経済新聞』)ではなく、最賃制も含めた保健・医療・福祉などの「セーフティーネットの張り替え」(1)なのである。



(1)金子 勝『セーフティーネットの政治経済学』(ちくま新書,1999年)

(2)広井良典『持続可能な福祉社会』(ちくま新書,2006年)




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