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フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるかフリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか
玄田 有史 /ダニエル ピンク
ダイヤモンド社 刊
発売日 2002-04
オススメ度:★★★★


アメリカの労働人口の4人に1人が、本書で言う「フリーエージェント」という働き方を選んでいるという。フリーエージェントとは、「インターネットを使って、自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた」人々を指す。フリーエージェントたちが、そういった働き方を選んだ理由、そしてその生活と仕事の実態が詳細に描かれている。著者が1年かけて全米を旅し、大勢のフリーエージェントたちに直接会って調査しているため、机上で練られただけの社会論にはない説得力がある。
本書の著者は、米上院議員の経済政策担当補佐官、労働長官の補佐官、副大統領の首席スピーチライターを務めたのち、フリーエージェントになった経験の持ち主。フリーエージェントの実態調査をといったミクロな視点と、フリーエージェントが社会に与えるインパクトといったマクロな視点からの議論がほどよくミックスされ、社会の大きな潮流をとらえた論述となっている。
「いまの仕事が永続するなどと言える人はどこにもいない。誰もが『臨時』労働者なのだ」というとおり、現代の環境においては、企業に人生すべてを賭けることは難しい。しかし、日々問題にぶつかりながらも、自分らしい働き方を模索しているフリーエージェントたちの「証言」は、本書を生き生きと彩っている。また、成功しているフリーエージェントだけではなく、万年臨時社員として不当に搾取されている層についての論述も詳しい。
日本では、社会のフリーエージェント化に関しては、アメリカに大きく遅れをとっている。しかし、正社員にならない働き方に対する関心は高まりを見せており、一部の業界では、すでにフリーエージェント社会になっている。本書の第5部で描かれているような未来の社会が実現するのも、そう遠い話ではないのかもしれない。(朝倉真弓)

”石がなくなったから石器時代が終わったのではない” 2007-03-01
 最大の驚きは、米国社会でのフリーエージェントの推定数でした。「雇われない生き方」は米国では予兆ではなく既に現実になっているのです。

 次に頭に浮かんだのが、タイトルにあげたコメントです。オイルショックの時代のアラブの大臣のコメントを知人に教えてくれました。このあとに「石油がなくなるからといって石油時代が終わることはない」と続きます。

 何かが100%完全に切り替わるのではない変化。 フリーエージェント社会が到来しても、正社員やパートタイマーが消えてなくなるわけではないでしょう。

 私の周囲にも「フリーランス」等の呼称で仕事をしている方がいますが、冷静に知人にしめる割合を考えてみるとまだ10%程度でしょうか。その方々も、何かしら組織との取引で仕事をしていると思われるので、組織側をささえる雇用−被雇用の社会構造の基盤ががらりと変わっているわけではありません。しかし、もう少しフリーエージェントの数が増えていく余地はあるのも確かです。

 では、どこまで変化するのか。変化の兆しに気がついたときに、その変化がどこまで既存の構造を変えるのか。面白いテーマです。




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